アリババが600万店のパパママストアを「天猫小店」化、ネットとリアルの融合が本格化する?

天猫小店

アリババとその創業者、ジャック・マー(馬雲)がまたやってくれました。「O2O」「ネットとリアルの融合」というテーマは中国のEコマース(EC)の世界でもホットな話題であり続けていましたが、現実には大きく成功した事例は聞こえてきません。そんな「名があって実がない」状態についに終止符が打たれるかも知れません。

「天猫小店」という名の実店舗プロジェクトです。8月29日開店した杭州の店は、官製メディアでも大きく取り上げています。売れ筋の日用品が購入できるのはもちろん、コミュニティでヒットした食品“網紅食品”の購入もできます。新しい概念の有人店舗で、それは零細小売店の目指す将来の方向性を含んでいると同時に、ECでの中国市場攻略を目指す日本企業の「闘い方」にも影響を与える可能性があります。

まずはアリババの絶好調の4-6月期決算をおさらいしてみましょう

アリババ杭州本社

最近はニューヨーク市場における同社の時価総額が4000億ドルを上回ったと話題になりました。また最近は金融子会社アント・フィナンシャルの活躍が目覚ましいばかりです。未上場の同社の企業価値は880億ドルと見積もられ、両社の価値を合計すると、アマゾンの時価総額を上回ります。確かに金融や投融資のニュースが多いとはいえ、本業でもしっかり将来を見据えています。ここでは小売り関係のニュースをまとめ、アリババの戦略について概観してみましょう。

先日発表されたアリババの4~6月期決算では、売上が501億8400万元(74億300万ドル)前年同期比56%増、営業利益は175億1300万元でこちらは前年同期比99%増と2倍になっています。
そのうち核心業務であるネット通販の売上は、430億2700万元(63億4700万ドル)前年比58%でした。これは淘宝、天猫などアリババの通販プラットフォームを利用した人は4億6600万人に達し、中国人口の3分の1が利用した計算となります。月間アクティブユーザー数は5億2900万人に達し、これは3カ月前より2200万人増えています。
その他の売上にはクラウドコンピューティングが3億5900万ドルあります。14カ所のデータセンターを持ち、31の国と地域でサービスを提供しています。

「O2O」「ネットとリアルの融合」を進めるにあたり、アリババはすでに実店舗を持つ小売企業に投資しています

中国のスーパー

アリババはこれまで実店舗を持つ、以下の小売企業4社に出資しています。

銀泰商業  持株比率73.7%
三江購物  持株比率32%
蘇  寧  持株比率19.9% 第2位株主
聯華超市  持株2億3700万株 第2位株主

またその他いろいろな新業態に、直接チャレンジしています。

盒馬鮮生  生鮮食品新業態店、住宅密集地に出店、“盒馬アプリ”をダウンロードして買物し、支付宝(アリペイ)で支払い。スマホを使えない老人にも配慮した。また3キロ以内は30分で配達するデリバリーサービスも行う。売場効率は良い。
淘珈琲   200平米の無人店、スマホ淘宝での買い物支援、通販商品受け取りなど。

さらに、無人スーパー、無人口紅販売機、無人自動車販売などにもトライしているようです。

アリババの「リアル進攻の総仕上げ」?1万店の出店と600万店のネットワーク化を推進

中国のパパママストア

中国には600万を超える零細小売店があります。それら小売店主の80%は45歳以上です。変革の時代に直面し、彼らには一体何ができるというのでしょうか。後継者問題も控えています。アリババはこうした零細小売店に“天猫小店”への参加を呼び掛けています。

参加した零細パパママストアに“天猫小店”はどんなメリットを提供できるのでしょう。アリババは、自社の提供するネットインフラや物流システムを利用できること、また当該商店の商圏内における消費データ分析を提供する、などを謳っています。

中国のパパママストアの実態と言えば、次のようなものです。乱雑な商品棚に、賞味期限、有効期限も定かではない商品が並んでいます。もちろん在庫分析などできていません。老人しか喜ばない古臭い商品ばかりで、まるでカエルの住処のような店もあります。まずそうした状態を認識しましょう、というところから始まりです。

それと同時にそれらの商品を通販サイト“天猫”上にアップします。他社の売れ筋商品と同様に販売することで、まず価格や品質の比較、つまりマーケティングが可能となります。近い将来には、商店を訪れるお客がどのようなタイプの人か自動的に識別できるようになります。それを根拠に購買の予想される商品を、あらかじめ準備できるはずです。

中国EC2位のJD(京東商城)グループの「100万店計画」に対抗

京東便利店

京東便利店
アリババは2018会計年度にこの“天猫小店”を1万店出店したい、と発表しました。また零細小売店100万店をシステムに参加させたい、としています。グループの金融事業は絶好調で、投資資金はふんだんにあります。問題はそのような実体店舗の需要が果たしてあるかどうかにかかります。またアリババがこの事業を急ぐのには別の理由もあります。

実はネット通販2位のJD(京東商城)グループが今年の4月、「100万京東便利店計画」を発表しています。これは今後5年間で100万店の京東便利店を開設する計画です。そのうちの多数をネット通販の恩恵が及ばない農村地区に出店します。ネット通販と実体店舗の融合で、農村地区の市場を独占する狙いです。零細小売店を京東の代理店に転換させ、ネット通販の受取りや、鉄道、航空券の発券など、都市同様のさまざまな便利なサービスを付加しようという計画です。

アリババの天猫小店はこれに対抗する狙いがあります。ともかく中国では、ネット通販の2トップが実店舗小売業を大改革しようとしています。これほど影響力のある小売企業は、実店舗業界にはもはや見当たりません。100万店などは大風呂敷にしか聞こえませんが、中国はスマホの普及、モバイル決済の普及、ライドシェアの普及、シェアサイクルの普及など、目を見張るスピードで成し遂げてきました。いずれも5年ほどで成し遂げてしまっているのが、中国のネット業界の恐ろしいところ。5年後、つまり2022年ごろには中国市場での闘い方が大きく変化している可能性もあります。

中国市場を攻略したい日本のメーカー・商社は「天猫小店」の動きに注目しておきたいところです。