いまさら聞けない「315晩会」って何?中国進出企業も注目「消費者保護」番組は2017年何を報道した?

2017年も中国では恒例の「315晩会」が放送されました。中国企業だけではなく、中国に進出している外国企業も大注目のこの番組。2017年は日本企業も取り上げられ、日本でも話題になりましたね。

この記事では、315晩会ってそもそもなんだっけ?という方にも分かりやすく、その歴史から説明してみたいと思います。

まずは歴史からおさらい

315晩会とは、中国のCCTV(中国中央電視台)が国際消費者権利デーである3月15日に毎年放送する生放送の暴露番組です。

番組では、中国の政府機関(最高人民法院、最高人民検察員、全人大、他多数の機関)と協力し、中国社会で消費者の不利益になりかねないような企業の実態を報道してきました。この番組に対しての中国国民の関心は非常に高く、「暴露」された企業は、すぐさまネット上などで適切な対応を取らなければ、相当のダメージを受けるとされています。

315wanhui

315晩会に注目が集まるのは、一つ目に、国営放送であるCCTVが力をいれている番組なので信用がある、という点、二つ目に、暴露されるのが国内の悪徳業者とは限らない、という点です。アップルを始めとした外資系の大企業も番組に取り上げられ、対応を迫られてきました。例外を設けない姿勢が「今年はどの企業がターゲットになるのか」という強い関心を集めているのです。

 

そもそも中国では、「政府は不正を許さない」という姿勢を広く国民に示すため、粗悪品の製造現場や、詐欺師の摘発など、警察や政府機関に密着したドキュメンタリーのような類の番組は日夜放送されています。それらの番組の代表が315晩会であると言え、別の面から見れば、国民の不満のガス抜きに利用されていると言えるかも知れません。

過去にはどのような企業が取り上げられた?

直近5年ほどで特に話題になった会社や商品について見てみましょう。

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2012年:マクドナルド廃棄対象品の処分問題
2013年:アップルのiPhoneの修理対応問題
2014年:ニコンデジタル一眼レフカメラ「D600」問題、肝油などの乳幼児向け食品問題
2015年:外資系自動車メーカーのディーラにおける不正修理費請求の問題
2016年:ネット関連、スマフォ関連の悪意あるサービスまたアプリの問題、QRコードの危険性の問題

2012年は、マクドナルドで廃棄処分されるべき食べ物が販売されていた事がクローズアップされました。マクドナルドは微博(Weibo)上の公式アカウントで対応を発表、しかし、この発表が大きな問題となります。該当店舗のみでの不正だと言及したためにその後大炎上、該当店舗は営業停止となり、その他の店舗でも大幅な売上ダウンに追い込まれました。

2013年は、アップルのiPhoneの修理対応問題が取り上げられました。アフターサービスが中国国内で定められている保証修理基準と合致しなかった事、またアメリカでの対応とは別基準であった事からダブルスタンダードだという非難の声が大きくなり、当時のアップルのCEOが謝罪文を掲載するという事態になりました。

2014年は、ニコンデジタル一眼レフカメラ「D600」の問題も話題になりました。カメラに黒点が映り込む事象が発生していたのですが、大気汚染によるフィルターへのホコリの付着だという説明に対し、疑問の声が浮上していました。

また、子ども向け食品である肝油も対象になりました。中国でも肝油は子どもが摂取するものとして一般的に知られていますが、ネット上で販売されている一部の肝油には、ピーナッツ油が大量に含まれていた事が判明しました。また乳幼児向け食品の基準ではなく、業者の水産加工品の基準に照らして違法に製造されていたのです。また、業者や販売者から推奨されている摂取量も過多とされました。医者たちは「これは薬であって、食品ではない。摂取過多は問題で、副作用が起きる可能性もある」と警鐘を鳴らしました。

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2015年は、東風日産、上海VW、メルセデス・ベンツなどのディーラの不正修理費請求の問題が対象になりました。「小病大修,没病大修(小さい故障でも大きな修理を、故障がなくても大きな修理を)」として、顧客に対して大きな修理が必要だと嘘をつき、高額な修理費を請求しているという疑惑が報じられました。

2016年には、主に中国国内のネット上で悪意があるとされるサービスに対しての指摘が続きました。通話費を不正引き落としする違法アプリや、淘宝網などのサービス上で不正にレピュテーション操作(詐欺師やサクラ行為)をしているショップや業者を摘発。ネット利用者へ警告する内容が多く放送されました。
また、越境EC関連では、中国に輸入されたおもちゃ、洋服、紙オムツなど、子ども向け商品のおよそ3割が不合格品だと報じられました。そのうち、おもちゃに関して誤って飲み込むことで簡単に窒息してしまう部品を含むものなど、安全性に問題があると指摘しました。主に、タイや韓国、ドイツ、米国からの商品であり、中国語での表示や説明書が貼付されていないものが多いのも大きな問題でした。

さて、2017年は?

今年2017年の315晩会で取り上げられたのは、意外にもTHAADミサイル問題で関係が悪化している韓国企業ではなく、主に日系食品企業と米企業のナイキなどでした。やり玉にあげられた無印良品とカルビーについて、放送内容を振り返ってみましょう。

中国では、2011年に発生した東日本大震災による福島第一原発事故を受け、放射能汚染区域として、福島県、群馬県、栃木県、茨城県、宮城県、山形県、新潟県、長野県、山梨県、埼玉県、東京都、千葉県の12都県からの食品、農作物、飼料の輸入が原則禁止されている。

 

一方で、日本から中国が輸入している食品の多くが、「原産地」を「日本」と記載しているだけで詳細な産地は掲載されていない。商品上の記載をよくよく確認すると、「東京都」、「栃木県」などの記載がある。

 

カルビーが発売している「フルグラ®」も取り上げられた。パッケージ上に記載されていた「K1」という工場コードを調べてみると栃木県宇都宮市であることが分かった。輸入業者に確認したところ、正規ルートで輸入されたものであり、問題はないと言う。しかし、貿易書類上には、放射能汚染地域と見られる住所は出てこない。

 

深圳の輸入業者に確認してみたが、正規ルートでの輸入品だとの説明だ。越境ECでは、商品は、各地の保税倉庫に保管され、注文があれば出荷される。この業者にも立ち入り調査がなされた。

 

無印良品についても同様だ。各地のデパートで次々に出店している同社では特に日本からの飲料や菓子が人気だが、飲料やクッキーなどの食品表示には「東京都豊島区」と書かれている。日本の放射能汚染区域から輸入されているとされる商品について全面的に調査、整理していく。

というのが、大まかな内容です。しかし、これはかなりの問題を含んでいると言わざるをえません。番組側が、製造者や販売者として記載されている本社の住所や製造工場の住所を、産地の住所だと勘違いしてしまっていたのです。かなり誤解のある報道だと言えるでしょう。

放送後の各社、日本政府、番組関係者の対応は?

放送後、すぐに行動を起こしたのが無印良品です。同社は 番組が放送された翌16日昼前に、中国版ツイッターの無印良品公式微博(Weibo)上で、番組で取り上げられた「東京都豊島区」の住所が「販売者」である同社の本社住所であり、原産地ではない事。また、飲料の原産地は「福井県」菓子の原産地は「大阪府」である事。さらに、すべての消費者に対して、無印良品の商品は中国のあらゆる機関からの通達と法律に則って中国に輸出されており、各政府機関に証明書についても提出済みである事を発表しました。問題になった商品の検疫証明書も画像で公開しています。

一方、カルビーはどう対応したのでしょうか。「フルグラ®」は中国人に非常に人気が高く、香港やマカオへ訪れた中国人のマストバイアイテムとしても有名でした。しかし、淘宝(Taobao)および天猫国際(Tmall Global)、1号店(Yihaodian)、京東(JD)上での検索にヒットしない状況です(本記事掲載時)。実は、番組放送前の今年2月上旬から3月上旬の段階で、深圳市市場稽査局が輸入通関業者への立ち入り調査を行い、その後、政府の国検部門が日本からの輸入食品についての注意喚起を行っていました。その段階で、食品を扱うネット業者に対して、流通を停止させたとみられ、在庫分について日本への返品も対応したようです。

一方、天猫国際上に出店されているカルビーの旗艦店のページ上部では、中国の法律を遵守し、原産地の証明と保税区での通関や販売を行っている事が記載されています。また、同ページ内「安心安全」のリンク先では、すべての商品は汚染地域以外からきた商品であると明記しています。「フルグラ®」については、カルビー本体よりも、輸入通関業者の対応に注目が集まりました。業者の責任者は「どのような事が原因であるにせよ、消費者へは謝罪したい」としており、流通分については購入記録が確認できれば返品に応じると発表しています。

日本でも、地震発生後、福島県産の一部の食品で放射線セシウムの値が高かった事から、食品の不買や値下がりがあり、風評被害へとつながりました。しかし、現在は放射能を測定し、一定の基準をクリアしたものについては流通しています。問題なのは、この日本の状況を大半の中国人は知らない事でしょう。

事実、中国の母親たちは放射線の被害の実態と日本からの輸入食品への影響についてかなり真剣に知りたがっています。日本の放射能漏れ関連のニュースについて彼らは度々目にしているのですが、内容が多少歪曲される傾向があったり、センセーショナルな見出しで報じられたりするため「日本の食品は怖い」という印象が強いのです。元々、彼らは粉ミルクメラミン混入事件(※1)に象徴されるような問題にさらされており、食品偽装などの問題に対してとても敏感です。このような状況では、中国語や英語を用い、積極的に海外へ向けた情報発信をして誤解を説いていかなければ、今後東京オリンピックにも影響が出るでしょう。

※1:2008年、乳製品メーカーの三鹿集団がタンパク質含有量偽装のためにメラミンを大量に入れた粉ミルクを生産していた事が発覚。乳幼児5万4千人が腎臓結石を患い、4人が死亡したとされる事件。その後、同様のケースが伊利や蒙牛など大手を含んだ数十社に及ぶ事が判明し、国産粉ミルクに対しての根強い不信感を招きました。

天猫国際

このような背景を踏まえ、中国人の反応を見てみましょう。315晩会放送直後には、特に無印良品の問題がSNSで大炎上となりました。同社の商品は多くの中国人にとって日頃からショッピングモールで目にする馴染み深いものです。そのため「フルグラ®」よりも注目を集めたようでした。友だちや有識者が発信した情報の拡散につぐ拡散。CCTVを信じるべきか、無印良品を信じるべきなのかの議論が続きました。しかし、翌16日に同社からコメントが発表されると、CCTV側の日本語知識が足りないがゆえの誤報に近いものだという理解が徐々に広まります。

「315晩会の内容は玉石混交だな。無印は冤罪な気がする」

「産地だけ書けばいいじゃないか。CCTVの言うとおりだ」
「無印の件はたしかに誤解かもしれないが、日本でも過去に食品の産地偽装問題というのがあったらしい」

「でも、やっぱり私は無印の商品を書い続けると思う」

「無印はいい宣伝になったな」

などの意見が相次ぎました。

放送を受けた各社声明の発表後、CCTVの番組関係者は、何のコメントも発表していないとみられます。しかし、上海出入境検験検疫局は「日本の核汚染地域から来た無印良品の商品は確認できなかった」と声明を発表しました。

中国進出する日本企業はどうすればいい?

315晩会の放送から言えることは、中国でビジネスをしている企業は商品を展開している淘宝網(taobao)、天猫(tmall)以外に、中国のSNSでの自社の評判に気を配らざるをえないということでしょうか。日頃から中国人がどのような事に反応し、どのように考え、どのように炎上していくのかについて、過去の事例を知っておくことは役に立つことでしょう。

また、「誤解」がもとになり自社の悪い評判が拡散、定着してしまうことも大いに考えられます。そのような際、いかに早く手を打つことができるか?ということも、中国で大きくビジネスを展開する上では欠かせない視点なのでしょう。